戦国の世を生きた
忍者に思いを馳せる
のんびりひとり旅
戦国の時代を生き抜いた、甲賀忍者の実像に迫る歴史ひとり旅
こんな人におすすめ
・歴史や史跡めぐりが好き
・観賞だけでなく、身体も動かしたい
・観光地化されていない場所を発掘したい
甲賀市ひとり旅のおすすめポイント
・忍者好きにとっては見どころだらけ
・童心にかえる忍術体験で爽やかな汗がかける
・ほどよい静けさがあり、気負いなく旅ができる
紹介する人:Naoki
人と話すのは好きだけど大人数の飲み会は苦手で疲れちゃう。
興味があることにはいろいろと手を出してしまうけど、1つのことが長く続かない。
対人関係にちょっとしたコンプレックスを抱える40代男性。
自然豊かなエリアが大好きで、身体を動かしたり、ぼけーっとしたり、仕事をしたりする時間が好き。
美味しいご飯ももちろん大切。
甲賀忍者の里:旅のはじまりから忍者だらけ
今回の旅の目的は、忍者が好きすぎて甲賀市に移住した知人に会いに行くこと。
忍者といえば映画やドラマ、漫画でもよく取り上げられ、海外の人にも知られた存在。
とはいえ、「ルーツや暮らしなど、意外と忍者について知らないことばかりだなあ」と思い立ち、甲賀市でどっぷり忍者に触れる2泊3日のひとり旅に出かけました。
東京駅から、まずは東海道新幹線で京都駅へ向かいます。
京都駅で在来線に乗り換え、おとなり滋賀県の草津駅まで、JR東海道山陽本線新快速で約20分。草津からさらにJR草津線柘植行に乗り換えて、約30分で甲賀市にある「甲賀駅」に到着しました。
駅舎のあちこちに、忍者になりきった写真を撮れるアートがちらほら。さっそく「忍者の里」に降り立った実感がわいてきます。
里の平和を守るため、忍者となった甲賀の人たち
甲賀市は滋賀県の東南部に位置し、滋賀県土の約12%を占める大きさ。地理的には、大阪と名古屋がそれぞれ100km圏内と、関西圏と中部圏を繋ぐ場所に位置しています。
今回は知人が車で案内してくれましたが、甲南駅でレンタサイクルもできるようです。路線バスは本数が少ないので、レンタカーかレンタサイクルという選択肢になりますが、観光スポットの距離を考えるとレンタカーがよいかもしれません。
さて、知人と合流して最初に向かったのは「甲賀流 リアル忍者館」。
ここでは、甲賀忍者の歴史や暮らしを学べます。
忍者と言えば、時代劇や漫画などでは戦闘的なイメージで描かれることが多いですが、甲賀忍者が得意としていたのは情報収集。甲賀にはポコポコとした丘陵地と、細かく枝分かれした谷地形が多くあり、丘陵の裾野にある家々は谷に遮られて見えにくいため、まさに隠れ里の様相を呈していたといいます。
一方で、大和街道や東海道が通る交通の要で情報が入りやすいため、時の権力者たちの亡命地でもあったそう。
そうした地理的背景と戦国の世にあって、地域の平和を守るため情報収集(スパイ活動)に努めるうち、「忍び」という軍事的スキルとして各地の大名に請われるようになったのだといいます。
リアル忍者館では、2022年に発見された忍術書「間林清陽」についても知れます。
複数人で忍び入るときの合図や、大勢に囲まれたときの対処法、仕込み杖の作り方から犬に吠えられないためのおまじないまで、「忍者も人だなあ」と身近に感じるものも多くありました。
甲賀忍者の歴史に触れた後は、館内でレンタルできる忍者衣装を着てまち巡りへ。
大人用は2種類4色(黒・赤・紺・緑)から選べ、借りるときに2,000円を預け、返却時に1,000円が返される仕組みです。
「忍者になりきって街をひとり歩き!?」と思うかもしれませんが、街をあげて忍者を推しているので堂々と楽しめます。
さっそく忍者に変身して向かったのは、茅葺屋根の古民家を改築した「忍夢庵(しのむあん)」。落ち着いた空間で、近江牛のローストビーフを注文しました。
軟らかく旨みを凝縮したローストビーフがお皿いっぱいに盛られ、途中からは、添えられたレモンジュエリーでさっぱり味わうこともできます。甲賀市では、近江牛を楽しめる飲食店もいくつかあるので、美味しいお肉を食べたい人にもオススメです。
贅沢ランチの後は、成田ふれあい牧場に併設された「ジェラート工房うらら」でデザートタイム。甲南町にある牧場で搾乳された生乳を使用しているそうで、口どけもよく美味しかったです。
力を合わせ、助け合って生きた里人に思いを馳せる
お腹を満たしたら、再び散策開始!
忍者が修行したといわれる3つの山のひとつ、庚申山(こうしんやま)へ向かいます。
庚申山には瑞応山竜華院広徳寺というお寺があるそうで、地元の人からは「庚申さん」と呼ばれている信仰の山だとか。ハイキングコースも整備され、展望台から一望できる景色からは、甲賀市の特徴である丘陵地と谷地形がよくわかります。
山を降りて、「岩尾の一本杉」にも立ち寄りました。
岩尾池のほとり、少し盛り上がった場所に鎮座する一本杉は、枝が高く広く伸びていて、その堂々たる姿に思わず魅入ってしまいます。天台宗の開祖・最澄が大地にさした箸が大きくなったという言い伝えもあり、どこか神秘的な空気を纏った古木です。
しばらく一本杉の木陰で休んだ後は、油日(あぶらひ)神社へ。
時代劇や映画のロケ地としても知られる油日神社は、甲賀の総社としてだけでなく、油の火の神を祀る神社として、全国油業界からの信仰も厚いそうです。楼門の奥に拝殿と本殿が一列に並び、厳かな雰囲気が漂っています。
境内に入ると、楼門の左右から拝殿と本殿を囲むように回廊が伸びている珍しい造り。
甲賀は一人の領主が支配するのではなく、57家ある里の人たちが合議制で里を治めていたそうで、油日神社の回廊は合議の場だったといいます。
戦国の世にあって、「みんなで話し合い物事を決めていた」というのには大変驚きました。結束力の強さも、忍者にとっては重要だったのかもしれませんね。
訪れたのは暑い時季でしたが、回廊に腰をかけていると楼門から涼しい風が通り抜けます。当時、ここに座った甲賀衆たちが里を想い話し合っている光景が目に浮かぶようで、心地よい時間を過ごせました。
甲賀忍者の歴史を知り、実直な暮らしを垣間見た一日目に宿泊したのはトレーラーホテル「PB STAY 甲南」。1泊シングル5,000円(税抜)とリーズナブルですが、客室内にミニキッチンや洗濯機まで完備されていて快適でした。
童心にかえる忍術体験で、心身リフレッシュ!
2日目は、忍術体験ができる「甲賀の里 忍術村」からスタート。
広い敷地の中に、からくり屋敷や忍術博物館、忍者修行を体験できる忍者道場などがあり、子ども連れでも楽しめるスポットです。
ここでもまず忍者衣装をレンタル。
からくり屋敷で、敵が踏み込んできたときのための武器の隠し場所やかくし戸、秘密の抜け道などを案内してもらいました。
からくり屋敷の後は忍者道場で忍術修行を体験します。
これが意外にハードで、挑戦しているうちに夢中になる楽しいアクティビティでした。
忍者の格好で本格的な石垣のぼりや塀越え、井戸抜け、綱渡りなどをこなしていくうちに、いつの間にか夢中になり、身も心もすっかり忍者になっています。
極めつけが水蜘蛛の術。
池に浮かべた2つのタイヤに両足で乗り、池の上に張られた綱を持って進んでいくのですが、これが結構難しく、全身の筋肉を使ってバランスをとることが必要です。頑張ったものの、結局池に落ちてしまいびしょ濡れ…。
とはいえ、レンタル衣装で汚れを気にせずすむためびしょ濡れになっても楽しく、童心にかえってリフレッシュできました。
久しぶりに身体を動かし、汗をかいた後は、「焼肉ねぎし」で近江牛の炭火焼肉ランチを堪能。食後は「道の駅 あいの土山」で、地元産茶葉を使用した抹茶ソフトクリームの盛り放題に挑戦しました。
自分で好きなだけカップインできるというものですが、挑戦できるのは1回のみ、盛りすぎて崩れても自己責任なのでちょっぴりスリリングです。無事にカップインできて、濃厚なお茶の香りと甘みを楽しめました。
館内では、地元でとれた野菜や地酒、竹皮で包まれた地産米のおにぎりなどが購入でき、レストランも併設されているので、お土産の購入やランチの場所としても良さそうです。
忍者から「甲賀の薬売り」へ:甲賀の今を支える先人の知恵
午後から街あるきを再開し、「甲賀市くすり学習館」を訪れました。
初めて知りましたが、甲賀市の今を支える地場産業は忍術から派生した製薬技術で、市内には製薬会社が多くあります。
滋賀県では昔からさまざまな種類の薬草が豊富で、甲賀忍者も薬草を育て、独自で加工して生薬を創り常備薬として使っていたそうです。情報収集のため、商人などに扮して諸国を渡り歩く際、旅先での生計を得るために売り歩いたといわれています。
忍術の極意書「万川集海」には、救急薬や敵を眠らせる薬などについても記載があり、「甲賀市くすり学習館」では実際に使われていた薬箱や薬研などを見られます。
先人たちの生き抜く知恵と行動力は、本当にすごいとあらためて感じました。
2日目は、東海道四十九番目の宿場町・土山宿にある、一棟貸しの古民家「OMO・YA(おもてんや)」に宿泊。江戸時代、街道を行き来する人たちの休憩所として親しまれた旅籠茶屋で、1日1組限定で宿泊できます。
一人旅には贅沢すぎる広さでしたが、趣ある雰囲気の中に静かな時間が流れ、ゆったりと過ごせました。
宿場町の風情が残る土山宿を散策
3日目は、東海道四十九番目の宿場町「土山宿」をのんびり散策しました。
格子戸のある古い家並が、宿場町の風情を醸し出しています。
土山宿には、参勤交代のときなどに大名が滞在した本陣跡も残っていましたが、残念ながら非公開でした。土山宿の端に、2日目に訪れた「道の駅 あいの土山」があるので、最終日のお土産購入に立ち寄るのもよいかもしれません。
その後は、湧水を利用した薬研堀が美しい「水口城跡」へ。
江戸幕府三代将軍・徳川家光公が上洛する際、宿館として築城され、その後は水口藩の居城となった場所です。現在は矢倉が復元され、水口城資料館として利用されています。4月には桜がライトアップされるようなので、春に訪れるのもよいかもしれません。
1日目・2日目は近江牛をたっぷり堪能したので、最終日のランチは人気の海鮮丼を食べに、遠方からもわざわざ訪れる人もいるという人気店「水口寿志亭市場の食堂」へ。
まさに大衆食堂といった飾らないお店で、メニュー表には海鮮丼を筆頭にまぐろなかおち丼やうに丼といった心惹かれるものが並びます。今回注文した海鮮丼は、新鮮な魚介が気前よく盛られているにもかかわらず、1杯690円とリーズナブル!ぷりぷりで脂ののった魚は文句なしの美味しさで、旅の最高の締めくくりとなりました。
忍者好きが高じて甲賀へ移住:福島さん
今回、案内をしてくれた福島嵩仁さん。
忍者が好きすぎて甲賀市に移住し、現在は忍者コンテンツを活かした観光づくりや情報発信をしています。忍者の研究もしており、なんとリアル忍者館に展示されている忍術書「間林清陽」を2022年に発見したのも福島さん。忍者コンテンツを活かして、滋賀県を世界的に知られる場所にしたいと、熱い想いを持って活動しています。
甲賀市ひとり旅の費用目安
<交通費>
京都駅 ⇔ 甲賀駅 往復2千円(JR)
<体験費>
甲賀流 リアル忍者館(入館無料・レンタル忍者衣装 千円)
甲賀の里 忍術村(当日券千円)
甲賀市くすり学習館(入館無料)
<宿泊費>
PB STAY 甲南 5千円
おもてんや 7千円
あとがき
甲賀忍者を知る2泊3日の旅は、忍者のかっこよさというよりも、難しい時代をみんなで力を合わせ、知恵を寄せ合って乗り越えた人たちのドラマを垣間見る、温かいものでした。
実際に甲賀に行くと、歴史的な事実だけでなく、そこで生きた人の目線や暮らしぶりを肌で感じられるので、また違う歴史の舞台にも行ってみたいという気持ちになりました。
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